’70 ニッサン ブルーバード 4ドア1800SSS サーキット専用車両の製作
まずはこのクルマをリアルタイムに知らない若人のために氏素性の解説から。 【以下、GAZOO.com名車館より引用】 70年代を迎えた時点でのブルーバードは、SOHCエンジンや4輪独立懸架など、当時の量産小型車としては高級なメカニズムを備えて67年8月に登場した3代目の510型であった。510も発売当初は1300の2/4ドアセダンおよびワゴンとサファリラリーで活躍した1600SSS(スーパースポーツセダンの意)のみだったが、シングルキャブの1600シリーズやクーペなど次第にバリエーションを増やしていき、70年9月のマイナーチェンジ以降、エンジンは1400/1600/1800の3本立てとなっていた。 71年8月には610という型式名を持つ後継車たるブルーバードUが登場したが、ボディサイズがひと回り大きくなり、エンジンも1600と1800に限られていたこともあって、510は翌9月にマイナーチェンジと車種整理を受けたのちしばらく併売された。 1800とクーペ、ワゴンが廃止され、1400/1600のセダンのみとなった510が生産終了となったのは翌72年8月で、そのマーケットは73年1月にデビューしたバイオレット(型式名710)が引き継いだ。 国産車史上の傑作車といわれる510だが、以後の日産は常にその影におびえているかのようで、その後も、新たな試みが失敗するたびに510を思い起こす動きが見られる。 【引用終わり】 40代以上の方々には、いまさら説明する必要もない名車ですね。 手に入れられたばかりのこのクルマで、「ただレストアするのではなくてサーキット専用車を作ってしまおう」とオーナー様が持ち込まれたのが、このプロジェクトの発端でした。 コンセプトは、「ブルーバードの形をした現代のレーシングカー」。 いや、「ブルーバードの面影を残した・・・」と言い換えたほうが良いかもしれません。 昔のシンプルなつくりの車だからこそできるコト。 パワーソースもパワートレインも、主要コンポーネントは現代の車から拝借し、極力軽量に仕上げてしまえば、あとは乗り手の腕次第、練習次第。 パワー制限:なし ウエイト制限:なし サイズ制限:なし 空力の制限:なし 公道走行の制限:なし ・・・レギュレーション自体、なし!! となれば、ここぞとばかりに作り手のやりたい放題です(笑 (もちろん、「予算も無制限」というわけにはいきませんが。) これからどう仕上がっていくか、リアルタイムに(ちょっと遅れ気味に)更新していきますので、どうぞご覧ください! |
まずは初のご対面。これだけ近くでしげしげと見るのは、(私は)実は初めてでした。 ボンネットを開けるとL型4気筒の1800ccエンジンがちょこんと載っています。 現代の車を見慣れた目からすれば、まさに「ちょこん」という感じで、ほのぼのした気分にさせてくれます。 横方向には十分なスペースがありますので、このスペースを利用しない手はありません。 「SR20DETならきっと積めるね。」 「余裕で積めるね。」 「せっかくだからバルクヘッドも後退させてフロントミッドに近くした方が良いね。」 「そうだね。」 と、オーナーさん不在の中どんどん話が膨らんでいきます。 ・・・・。 どうなることやら。 |
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数回の打ち合わせの後、方向性が定まり作業に着手することになりました。
まずはボディから製作していきます。 なにはともあれ、ドンガラ(ホワイトボディ)にしなくては始まりません。 広いスペースでドアを開けて室内の装備類を全部取り払います。(上段・中段写真) 次に リフトで持ち上げてエンジン・ミッションを降ろし、外でできる作業は終わります。(下段写真) |
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ガレージ内の重作業用の定位置に運び、不要なアンダーコートやブラケット類の切除、剥離剤による塗膜の剥離を行います。(上段写真) トランクルーム内のスペアタイヤハウスも、必要ありませんのでプラズマカッターで切り取ってしまいます。(中段写真) ようやく、ボディの準備が整いました。(下段写真) |
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ロールケージの製作にかかります。 まずはボディ側にあて板補強をします。板の内側部分にも穴をあけ、ボディとの溶接の面積を増やして万一の際にもはがれにくく作ります。(写真1段目) メインアーチの形を決めたら、細いパイプでジグを作っておきます。 ジグに合わせて、ロールバー用の鋼材を手曲げで製作し、メイン→サイドの順でボディに仮付けします。仮付けの段階で微調整を終えたら、本付けしていきます。(写真2段目) メインとサイドバーの本付けが終わったら、接続部位に補強(ガセット)を入れていきます。無駄な部分はバーリングを施して軽量化とひねり剛性を上げて製作します。 (写真3段目から4段目) AピラーとBピラーには、ちょっと大げさなガセットを入れることにしました。 いかにも「ガセット入ってますよ〜」的な感じでアピールしたいそうで(笑)。(写真5段目から6段目) これでロールバーは完成です。(写真7段目) |
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ここで突然、エンジンとサスペンションのドナーとなるS14シルビアの登場です(笑) オートオークションで仕入れて来て、速攻でバラバラにされました。(ボディは解体屋さん行き) エンジンはSR20DET、ミッションはNISMOの6速クロス、サスペンションはこのS14のと市販のピロボール式アーム類を使いつつ、F:ストラット R:マルチリンクに改造予定です。 |
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搭載するエンジンとミッションが来ましたので、バルクヘッドとフロアトンネルを製作します。 プラズマカッターでばっさりと切除し、エンジンミッションをあてがって干渉を確認する地道な作業が続きます。 今回はNISMO 6速クロスを搭載するので、ミッショントンネルを大きめに作って後のメンテナンス性を向上させておきたい、とのご要望もありました。 ミッショントンネルを製作してから、さらにエキゾーストパイプが通るトンネルも製作しました。 エンジンマウントは、S14のメンバーを加工してボディ側を補強した上で取り付け、ミッションマウントは新たに製作しました。 |
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エンジンミッションが搭載の目処が立ったところで、難関のリア周りへ移ります。 トランクフロア全部とリアシートフロアの一部を切除し、S14のリアメンバーを丸ごとあてがって確認します。(写真1段目) さらに干渉する部位は、ガスバーナーであぶって叩いて室内側へ追いやりました。 (写真2段目右) 今回は新たにストラットタワーなるものが必要となるため、新設します。(写真3段目左) S14メンバーを固定するために、ボディ側から生えるピンを削り出しで製作します。(写真3段目右) この頃には安全燃料タンクも届いていたため、トランクフロアは燃料タンクを設置する形状に製作しました。先ほどのメンバー固定ピンも、取付部の剛性確保と燃料タンクの保護を兼ねて頑丈な角断面パイプを使用して取り付けました。(写真4段目) サスペンション可動範囲などのすべての干渉が無いことを確認した上で、最後に室内側フロアを製作します。(写真5段目左) 最終的な車軸の高さはこの辺になります。(写真5段目右) |
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またもや場所を移して(笑)、今度はフロントサスペンションです。 すでに出来上がっているメンバーを基準にして、ナックルとの位置関係や車高、ジオメトリーを設定したら、純正のタワーを切り取ります。(写真1段目) 純正タワーの位置からどれくらいオフセットさせるかを決めてあるので、それに従いサスペンションタワーを製作します。(写真2段目) |
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フロントサスペンションアームは、サーキット専用車両ということで今回はワンオフしました。アーム長もできる限り長く取り、ピロボール式にすることはもちろん、ピロカラーやスペーサーによって調整範囲も細かく設定できるようにしました。 | |
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ボディ側にはサスペンションアームのブラケットが用意されました。 もちろん、取り付け位置などはこのクルマに合わせて適正化しています。 |
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サスペンションを取り付けて、確認のため仮合わせのホイールを履かせて着地させてみます。 前後とも、予定通り思いっきりボディからはみ出ているのを確認できました(笑) |
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ダッシュボードも新規に製作することになり、今回は簡易的な型をアルミで製作(上段)し、なるべく軽くWETカーボンで製作しました(下段)。 こういった単純な造形の場合は、一発型にアルミを利用できますので比較的安価に(とは言っても本型と比べて、の話ですが(^_^; )製作が可能です。 |
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前後のオーバーフェンダーを取り付けました。 今回はS30フェアレディZが現役時代にレースで使用されていた、いわゆる「ワークスフェンダー」と呼ばれる形状のものを、型を持っていた業者さんに無理言って再製作してもらいました。 それもリアだけ2セット、嫌がらせに近いという(笑) というわけで、この510は前後ともS30のリア用オーバーフェンダーを装着します。 |
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いよいよ室内の装備品類に移っていきますが、ブレーキは前後のバランス調整が可能なようにツインマスターシリンダーとします。 TILTON製のペダルキットをベースに、ボディ側のマウント位置を製作してペダルキットも加工して取り付けました。 フロアのフットパネル、フットレストはアルミでワンオフ製作としました。 |
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外装の仕上げに入ります。 車高などが決まったところでフロントには大型のエアダム、サイドにも前後のオーバーフェンダーをつなぐような大きなサイドステップを製作することにしました。 画像はとりあえずダンボールでイメージを見ているところです。 予算が尽きたからダンボールでお茶を濁そう、というわけでは決してありません(爆) フロントエアダムには細長いインタークーラーを製作して中に入れてしまおう、という計画です。画像がないのですが、このあとワンオフで製作しました。 |
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当初からの計画で、外装の塗装はオーナー様ご指定の業者さんで行うことになっておりまして、ボディとサスペンションがすべてできたところで、当社の作業はいったんお休みとなりました。 塗装から戻ってきてからは、すべての配管、配線、装備品類を取り付けて完成です。 |
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