BMW Z4 Mcoupe('06) VLNスタイルロールバー製作
一般に市販されているZ4 Mcoupeに、ドイツの耐久レースVLN専用レースカー「Z4 mortorsport version」と同じようなスタイルのロールバーを製作して欲しい、というオーダーでした。
ロードゴーイングのモデルには、座席とリアスペースとの間にモノコックの一部として隔壁が存在し、これを切除するところからこのストーリーは始まります。

リアハッチゲートを開けてカーペットなどの内装を剥がすと、問題の隔壁が姿を現します。
この中にはオーディオコントロールユニットやスピーカーやシートベルトユニットなど、取り外しても構わないようなものから重要なものまで、いろいろ入っていますのでそれらを取り外すところからはじめます。
座席側から見ると、この隔壁の高さがアイポイントくらいまであることがよく分かります。
実はシートのすぐ後ろのボディ下側に左右幅一杯の燃料タンクがあり、後方や側面からの衝撃に対してタンクを守っている可能性がありますので、この隔壁を取り外すにあたっては元の役割を十分に考慮した設計が必要と考えました。

オーナーさんからの条件としては、
@後ろからガラス越しに見たときにVLN車両そっくりのクロスバーが入っているのが見えること
A一見溶接のようでボルト留めとし、脱着が可能なこと
とのご提示でしたが、我々はさらに
B元のボディと同等以上の安全性を確保すること
を付け加え、この当時発表されたばかりのMortorsport versionの写真を元に完成イメージを打ち合わせし、写真の色付きの部分のみの製作に決まりました。

問題の隔壁の構造をよく調べ、役割を十分に理解したうえで切除作業を開始します。 同時に隔壁に納められていたユニット類の調査も進め、要らない物は外し、要る物はどこに移設するのかを決定しておきます。
最も頭を悩ませたのがシートベルトユニット(巻き取り)でした。
ロールバーが立ち上がるベースとなる部分を製作します。
クロモリ鋼板を切り出し、アルゴン溶接でボディに溶接していきます。

溶接の途中も、あまり熱を加えすぎないように時折休みながら慎重に作業します。
 

パイプ砂曲げによってロールバーを製作します。
仮に出来上がったメインバーとクロスバー。
車体に仮組みし、クロス部分の補強を製作します。
この後、さらにシートベルトユニットの取り付けとバッテリーのドライバッテリー化&移設を行い、塗装と内装の仕上げのためにオーナーさんご指定の鈑金屋さんへ運ばれていきました。